ふたつのさくら

電話を切って、紙とペンを用意する。

そこに箇条書きで、凍夜と菖蒲、先代に言っておきたいことを書き出した。

その紙と、少し前にまとめた当主の仕事内容を書いたノートを机の中に入れる。

代わりに、ダイヤル錠のついた箱を取り出して、中身を全部ゴミ箱に捨てた。

残っていたって、困るだけだ。

部屋を出ようとして、本棚に何かが引っ掛かっているのを見つけた。

近づいてみれば、ネックレスだった。

咲良さんからの最初で最後のプレゼント。

これは……捨てられない。

首にかけて、部屋を出た。

すると、ちょうど部屋に入ろうとしていた菖蒲と鉢合わせる。

最悪。

「朔羅……目、真っ赤だけど……何かあった?」

「何も。」

そう、何もない。

目が紅いのはもうずっとそうだ。

今さら気にすることじゃない。

「何もって……そんなわけ……」

「菖蒲。」

声を荒らげようとする菖蒲を止める。

もう遅い時間だから。

「いいか。今から僕がすることに何も口出しするな。手も出すな。それが守れるなら、好きにすればいい。」

何が何だかわからないといった様子の菖蒲を置いて、廊下を進もうとする。

「ちょ!どういうことだ?」

だけど腕を掴まれて止められた。

手、出すなって、言ったよね?

振り向いて、菖蒲の目を見る。

「もう一度言う。手を出すな。口を出すな。次はないぞ?」

温情は与えた。

警告もした。

このあとは、もう知らない。

菖蒲は手を離さない。

振り解こうとしても、離れてくれなかった。

聞き分けの悪いやつ……。

「菖蒲、」

「朔羅。」

被せるようにして言ってきた。

「どこに行くつもりだ。」

「凍夜の部屋。」

目的は2つ。

菖蒲が手を離した。