ふたつのさくら

先代は拗ねたように言った。

「……朔羅、お前さっき、うなされてたんだよ。そのときに呼んだのが、近くにいた俺じゃなくて、菖蒲。なんで菖蒲なんだよ。」

…………。

ただの嫉妬じゃねーか!!

知らねーよ!

うなされてた覚えなんてないし、夢で菖蒲を呼んだ記憶もないし、そもそも夢を見てた気がしねーよ。

大体、そんな体した人を頼れるかってんだよ。

少し考えれば分かるだろーが。

しかも今さらすぎるだろ、その疑問。

僕が先代よりも菖蒲を頼るようになったのは、その怪我をしたときからだからね?!

6年以上、それに気づかなかったとかマジ?

それとも気づいてて聞いてなかった?

だとしたらなんで今聞いてきたんだよ。

てか、わざわざ菖蒲がいるところで聞かなくてもよくない?!

菖蒲困っちゃったじゃん。

ほんとなんなのこの人。

いろいろおかしいだろ……。

あー考えてたら頭痛くなってきた。

部屋戻って休も……。

「帰らせていただきます……。」

立ち上がって部屋を出ようとすると、今度は菖蒲に腕を掴まれた。

『なんとかしろ、うちの手に負えるやつじゃない。』

目線でそう訴えてきてるのが分かる。

僕の手に負えるやつでもないよ。

「はぁ……」

ため息をついて、また座った。

なんなのこの人……。

「……寝てるときの記憶なんてありません。だから、菖蒲を呼んだ理由も、先代を呼ばなかった理由も、覚えてないです。これで満足ですか?」

かなり投げやりな返事だが、正直面倒だから許してほしい。

ていうかね?

僕、先代といるの、そんなに好きじゃないのよ。

なんか僕の弱さを思い知らされてる気がして……。

だから一刻も早くここから離れたいわけ!

言ってる意味わかる?

先代はまだ納得してないような顔だった。

「……じゃあ、なんで今も頼ってくれないんだ?」

それ、言わなきゃダメ?

「……『頼らない』じゃなくて、『頼れない』んですよ。これでも僕なりに、あなたを気遣ってるつもりです。では。」

部屋を出た。

今度は2人とも、止めることはなかった。