ふたつのさくら

凍夜を部屋に帰して、着替えと支度をする。

薬も2錠飲んで、2錠、すぐに取り出せるようにポケットに入れた。

まだ新学期始まって2日目だから、特に持ち物もない。

「……一応、ね。」

長さ20センチ程の短刀を空っぽのカバンに入れた。

薬じゃ即効性がない。

暴走しそうになってから飲むじゃ遅いのだ。

だから、もし仮にそうなった時は、自分の手でもなんでも切って、痛みで自我を保つ。

辛いことに変わりはないけど、それが1番効果のある解決法なのだ。

ブレザーのジャケットとカバンを手に持って部屋を出る。

居間に荷物を置いて、台所へ向かった。

「おはよう、母さん。」

味噌汁の鍋をかき混ぜている母親に声をかけた。

机の上には朝食のおかずが乗っている。

「おはよう、朔羅。よく眠れた?」

「うん」

頷きながら冷蔵庫を開け、麦茶を取り出す。

それとコップ3つを持って居間に戻れば、凍夜がのろのろとやってきたところだった。

「凍夜、朝ごはん運ぶの手伝って。」

「はーい。」

2人で配膳をして、3人で朝食を食べる。

徒野家のいつもの風景だ。

食べ物を口に入れても、昨日感じた違和感は全くなかった。

疑問には思うけど、顔には出さない。

出したところで解決しないし、2人を心配させるだけだから。

食べ終えて、食器を流しに持っていったところで母親に声をかけられた。

「朔羅、無理しないでね?」

……なんでみんな、そう心配性なのかなぁ。

先代くらい無関心でいてくれたら楽なのに。

「大丈夫だって。自分のことは自分でよく分かってる。危ないことはしないよ。」

笑って答えた。

なおも心配そうな顔をする母を置いて、居間に戻る。

凍夜はもう家を出ていた。

小学校の方が遠いからだ。

ジャケットを着て、荷物を持って玄関から中に声をかける。

「それじゃ、行ってきまーす!」

「はーい、行ってらっしゃーい!」

それを聞いて僕は家を出た。