ふたつのさくら

当主は悔しそうに俯いた。

「……すまない。」と小さな声で言って、顔を上げる。

そこに迷いはなかった。

「朔羅。」

「はい。」

昨日、咲良さんには連絡を入れた。

会える時間が少なくなるって、外の街に行けることも少なくなるって。

もう、覚悟は決めた。

「お前を第253代徒野家当主に任命する。」

頭を下げる。

「……慎んでお受けいたします。」

この瞬間、僕の人生は終わりを迎えた。

頭を上げれば悲しそうな顔をした当主……先代が目に入る。

その顔のまま、先代は口を開いた。

「……朔羅、18になるまで。だから凍夜が今のお前と同じ10歳になるまででいいからな。」

それは……そうだね。

「……はい。」

どれだけ絶望的だろうと、一緒にいれるうちは一緒にいたいから。

「それと、辛いことや苦しいことは、俺も手伝うから。」

「……いえ、大丈夫です。」

先代の目を見た。

これが最後。

「……教えてくだされば、1人でできます。」

線を引いた。

先代との間に線を引いて、壁を作って、距離をとった。