ふたつのさくら

……少し休んで、時刻は午前3時半過ぎ。

やっと体が回復してきて、自力で動けるようになった。

父と2人で、のんびりと家までの道を歩く。

なんか話してたような気もするし、何も話してなかったような気もする。

どっちにしても、覚えてないってことは大事な話じゃなかったんだろう。

そんなとき、森の方から悲鳴が聞こえた。

男の人の声だ。

「行くぞ!」

「はい!」

同時に走り出す。

さっき森を見たときは何もなかった。

でも、悲鳴は確かに森の方から聞こえた。

時間にしてせいぜい1時間くらいだ。

その間に、何かが起きた。

森の奥に入るにつれて、妖怪の気配が大きくなり、嗅いだことのあるような、ないような、よくわからない匂いが強くなる。

木々の間を縫うようにして進み、開けた空間に出た。

「っっ!!」

「っ、見るなっ!」

出た瞬間、父が僕の視界を遮るように目の前に立ったが、遅かった。

その光景は、すでに僕の脳裏にくっきりと焼き付いていた。