ふたつのさくら

……けたたましいアラームの音で目を覚ます。

隣で寝ている凍夜が、僕の右腕を持って離さないので、左手だけでなんとかアラームを止めて、起き上がる。

まだ体が重い。

だけど、気持ち悪さは夜中よりはだいぶ楽になった。

全く起きる気配のない凍夜に声をかける。

「凍夜、朝だよ。そろそろ起きないと、学校遅刻しちゃう。」

「んーん……」

嫌だ、と言うように腕を掴む力を強める。

呆れた……。

「凍夜。本当に起きて。遅刻したら凍夜も怒られちゃうでしょ?」

「やぁだぁ……」

こいつ、絶対起きてるだろ。

腕を引き抜こうとする。

しかし、小さな体のどこにそんな力があるのか、全く抜ける気配はなかった。

「凍夜……」

なんかもう、朝から疲れた。

再び布団に横になり、無料メッセージアプリ通称LENI(レニ)を開く。

咲良さんとのトークを開いて、こうメッセージを送った。

『おはようございます。駄々っ子が起きないので遅れるかもしれません。もし間に合ってなかったら、先に行っててください』

まだ6時を過ぎたばかりだというのに、返事はすぐに来た。

『おはよう!朝から大変だねぇ。頑張れ!』

それに既読だけつけて携帯を閉じる。

さて……こいつをどうしようか。

まず普通に声をかけてもダメ。

ただ揺するだけでも絶対に起きない。

いや、そもそも起きてると思うから、どうやってこの腕を離してもらうかを考えた方がいいか。

引っ張っても取れなかった。

試しに振ってみると、凍夜も一緒に振られていた。

気持ち悪くならないのかな?

「……凍夜、腕、離して。」

「……兄さん、今日は、休むの。」

ほらやっぱり起きてる。

「はぁ……休まないって。もうなんともないから、学校行くよ?」

手を引けば、簡単に抜くことができた。

「昨日はたまたま、ちょっと荒れてただけだから。」

納得できないといった表情をする凍夜に伝える。

「今日はもう元気だし、荒れてる感じもないから大丈夫だよ。ね?」

目を見て笑って言えば、やっぱり納得できなそうだったけど、頷いてくれた。