ふたつのさくら

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渡貫当主への連絡を終えてしばらくが経った。

渡貫当主は渋い声をしていたが、最終的には咲良さんの判断に任せるらしい。

それなら安心だ。

咲良さんがこれ以上僕と関わることを望むはずがないから。

そのことが悲しいような、嬉しいような……。

もう自分の感情もよくわからないや。

でもこれだけは分かる。

これからのことを考えるたび、咲良さんのことを思うたび、自分がすり減っていく。

妖怪に侵蝕されるんじゃなくて、人としての僕の精神が、少しずつ削られていく。

自分の死が目前に近づいて、無意識に恐怖を感じているのかもしれない。

別に死ぬことが怖いわけじゃないんだけどな……。

……あ、このこと、先代に報告してない。

うわーちょー行きたくない。

でもなぁ……礼儀として、行かないとダメだよな……。

一応父親だし。

仕方ない、行くか……。

僕は壁に手をついて、無理矢理立ち上がる。

さっきまで泣いてたから体力持ってかれてて、倒れそうだった。

それを気力だけでなんとか耐えて、先代の部屋へと向かった。