ふたつのさくら

「でも、真剣に考えたほうがいいわ。」

「ふぇ?」

急に真面目に戻ったお母さまに困惑する。

考えるって、なにを?

「朔羅くん、あなたといると自分が削れていくのは確かなんだって。だからあなたとは距離を取るようになったし、学校でも、対策を取ってもらってるって。覚えあるでしょう?」

……確かに、学校での朔羅は私を避けているように感じた。

登校したらすぐにどっか行ってたし、帰りも急ぎ足だったように思う。

最近は朔羅が学校に来てなかったから忘れてたけど、授業中に抜け出したりもしてたような……。

考えながら頷くと、お母さまはまた悲しそうな顔をした。

「……あなたが決めなさい。今までと同じように朔羅くんと過ごすか、朔羅くんとは離れて過ごすか。」

「……はい。」

お母さまが部屋を出て行った。

言われたことの意味がわからないほど馬鹿じゃないつもりだ。

今までと同じってことは、婚約がそのまま、ってこと。

つまり朔羅は、徒野の家にいる必要がなくなる。

成人したら渡貫に婿入りして、妖怪の力を使わなくてよくなるんだ。

でもそうすると、どうしても私といる時間ができる。

それは朔羅にとって苦痛なんだ。

本人がどれだけ一緒にいたいと願っても、体が、それを許してくれない。

逆に離れて過ごすってことは、婚約が解消されるってこと。

大袈裟かもしれないけど、今後一生、朔羅とは会えなくなる気がする。

つまり私が原因で、朔羅が苦しむことはなくなるんだ。

でも徒野の家からは離れられない。

当主を降りる理由がなくなるから、成人したあとでも、妖怪の力を使い続けることになる。

それも、朔羅にとっては苦痛なんじゃないか?

どっちを取っても、朔羅が苦しまないで済むことはない。

それだったらいっそのこと、2人で狂ってしまえばいい。

徒野とか渡貫とかの話は全部無かったことにして、2人だけで、生きていけばいいじゃない。

朔羅は嫌がるだろうけど、私はそれでいいと思うよ。

携帯を手に取って、再びあのメッセージを送った。

「……朔羅。私は、あなたから離れられない……。」

誰にも知られることなく、私はひとつの覚悟を決めた。