ふたつのさくら

お母さまは少し考えて、今度は優しく尋ねてきた。

「……なにを言われたの?」

朔羅、それは言ってないんだ。

そうだよね、実の親に言えるわけない。

「あなたの娘が大嫌いです」なんて、どんな神経してたら言えるのか。

「……私のことが嫌いだって。」

思い出して、また泣きそうになった。

「朔羅、初めて私を見たときから、ずっと嫌いだって……。」

そう言った朔羅の声は、聞いたことないくらい冷たくて、怖かった。

「殺したいほどに、憎いって……言われた……。」

私は朔羅のことが好きだから……大好きだったから、そう言われて嫌だった。

今までずっとそれを隠して過ごしていたことを知って、ショックだった。

「そう……。」

お母さまは悲しそうにつぶやいて、私の頭を撫でた。

「……咲良。それ、朔羅くんが本気で言ったと思う?」

「え……?」

本気じゃなかったらなんなの?

あんなこと言って、冗談で済まされるとでも思ってるわけ?

「……朔羅くんね、泣きながらこの話を持ってきたの。」

朔羅が、泣きながら?

朔羅が泣く理由なんて無いじゃない。

「咲良さんを守るにはこれしか思いつかなかったって、言ってたわ。」

私を守る?

なんで?

朔羅は私のことを守る必要ない。

「あの子も不器用ね。咲良の体は守れても、心は守れてないじゃない。ま、彼もそれは分かってたけど。」

「ねぇ……どういうこと、ですか……?」

真意が掴めない。

それにその言い方だと、期待してしまう。

自分の都合のいい方に、解釈しそうになる。

お母さまは私の質問に不思議そうな顔をして、なんてことないことのように答えた。

「そんなの……朔羅くんがあなたのことが好きすぎて困る、ってことよ。」

「っ?!」

都合が良すぎる。

朔羅に嫌われてなかった。

憎まれてなかった。

電話で言ってたことこそが嘘で、本当は朔羅も私のことが好きだった、ってことでいいのね?!

嬉しくて涙が出てきた。

今日は泣いてばっかだ。

「朔羅ぁ……よかったぁ……!」

「あなた……鈍いというかなんというか……いえ朔羅くんの演技が上手かったのかしら……?」

お母さまがそんなことを言いながら頭を撫でてくる。

鈍くないもん!