ふたつのさくら

やっと聞き取れるくらいの声で、咲良さんは言った。

「あれ?これは知らなかったんですね。まあそうか。菖蒲たちにもバレないようにずっと隠していたので、知られてたらそれはそれで困るんですけど。」

菖蒲が動き出す様子はない。

終わるまでは待っててくれるんだな。

ありがたい。

「僕が初めてあなたを見たのは、あなたのお披露目の日です。自分とほぼ同じ境遇の女の子が、元気に外を歩いている様を見せつけられました。僕は布団から起き上がるのがやっとなのに。」

見せつけられた、なんて嘘だ。

自分で勝手に外を覗いただけ。

勝手に覗いて、勝手に嫉妬して、最終的に、勝手に好きになっただけ。

言わないけど。

「それで僕は努力しましたよ。本当に死ぬほど苦しい思いをしましたよ。自分も、あなたと同じように『普通』になってやろうって、頑張りましたよ!」

……もう、これ以上は辛い。

でも言わなきゃいけない。

「それでやっと学校に行けるようになったらあなたがいて!他の人と同じように無視すればいいのに、話しかけてきて!嬉しいと思いましたか?!僕は、惨めでしたよ!!」

「…………やめて……」

咲良さんが言う。

泣いているような声だった。

もう、戻れないな……。