ふたつのさくら

これからのことを考える。

咲良さんが僕のことを知ってしまった。

その上での「逃げよう」って言葉。

一体なにから、どこに、どうやって逃げるつもりなのか。

昔から少し抜けたところがある子だった。

そういうのは全く考えずに言ってきてるだけかもしれない。

明日になったら、考えも変わっているだろう。

それを期待して待つか、それとも僕からも正直に話して、ちゃんと嫌われるか。

菖蒲のことだから、僕が不利にならないように話したんだろう。

あくまで悪いのは妖怪で、僕じゃないって。

僕も、ずっと苦しいのを耐えてるんだって。

でもそうじゃないんだよ。

妖怪は僕で、僕は妖怪だから。

苦しいし辛いけど、でもそれを選んだのは僕で、こんな結果を招いたのは僕自身だ。

だから悪いのは全部僕。

そうじゃないと、ダメなんだ。

「……ねえ菖蒲。」

顔を見ないように、見せないようにしながら声をかけた。

「ちょっとだけ、1人にして。」

今から話すことを聞かれたら、絶対に止められる。

分かってるならそんなこと言うなよって思うかもしれないけど、そうはいかない。

咲良さんを、僕から解放しないといけないから。

「……分かった。」

菖蒲は部屋を出ていった。

襖の先にいるような気配はするけど、それは構わない。

話に口を挟んでこないなら、そこにいてもらってもいいだろう。

携帯の画面をつけて、電話をかける。

頼まれちゃったからね。