ふたつのさくら

電話がかかってきた。

無視する。

今は話したくない。

これからも、話したくない。

誰かが携帯を手に取って、電話に出た。

「あ、お嬢。ごめんねー、朔羅寝ちゃって。うん、起きたら言っとくよ。じゃあな。」

菖蒲が僕の手に携帯を握らせて、横に座る。

「電話してってさ。」

絶対しない。

「てかお前、寝すぎ。おかげでうちの仕事が多すぎるんだけど。どうしてくれんの?」

責めてるわけではなさそうだ。

むしろ嬉しそう……?

ドMだな。

菖蒲は反応のない僕に気まずそうな顔をして、悲しそうに口を開いた。

「……ごめん。全部話した。」

「……?」

誰に?なにを?

「そろそろ隠しとくのも無理があるだろ?」

「……は?」

なにしてんの?

なに言ってんの??

「なに……勝手なことしてんだよ……!」

完全に八つ当たり。

今まで僕が言わなかったことを、菖蒲が教えてくれただけ。

僕が素直に、もっと早くに話していれば、こんな重荷を菖蒲に背負わせる必要もなかった。

そう分かってるのに、無性に腹が立った。

「あの子は、なにも知らなくて良かった……!こんなこと、知らないほうがいいだろ……!!」

「……ふっ」

菖蒲は笑った。