ふたつのさくら

……回り回って、私が朔羅の自殺未遂の原因だった。

自分の部屋に帰って、片付けをしながら言われたことを整理する。

朔羅は妖怪の力が強い。

それが原因で、小さいときは外に出られなかった。

私たちの婚約は、朔羅がその力を使わなくてもいいように、政略的に決められた。

私の護衛って理由も、少しはあったかもしれないけど、大部分はそっちだろう。

だけど、朔羅のお父さまが当主を続けられなくなって、朔羅が継いだ。

あとは、朔羅は毎日苦しんでいる。

調子が悪い日は布団から起き上がれないし、ご飯も食べれない。

気絶することも、ある。

ただ自分の中の妖怪を鎮めるために、唸り声を上げることしかできないらしい。

想像するだけでも発狂しそうなのに、朔羅はそれを体感しているのだ。

そして次の日にはなにも無かったような顔をして、私に笑顔を向けていたんだ。

また、そうやって元気に見える日でも、頭痛を感じていたり、体がだるかったり。

いつ限界が来るかの恐怖に怯えていたり。

限界が来たら、朔羅は人を食べちゃう。

最初に狙われるのは、間違いなく私だろう、って菖蒲さんは言っていた。

朔羅はそんなこと絶対にしたくないから、どんなに辛くても耐えるし、我慢する。

今朝みたいに、死んでいなくなろうとも、する。

どれもこれも、私を守るため。

朔羅は私が安心して暮らせるように、自分のことよりも、私のことを優先している。

「……それでも、死んだら意味ないよ……。」

不思議と涙は出なかった。

ずっと知りたかった、朔羅の秘密を知ることができた。

これが朔羅が隠していたことの全てだ。

朔羅から直接聞かなくてよかった。

朔羅は絶対に、私に嫌われようと、自分を必要以上に悪者に仕立て上げる。

根拠もなにもないけど、そういう確信があった。

菖蒲さんから聞いたから、私は苦しくなっている。

菖蒲さんは脅すようにああ言ったけど、でも朔羅が頑張ってることも、苦しんでることも話してくれたから。

私は朔羅が戦ってることを知ったから。

容易に朔羅を嫌うことができなかった。

「……ねぇ、どうしたい?」

自身に問いかける。

「朔羅と一緒にいて朔羅に今まで以上の苦しみを強いるか、別れて朔羅の苦しみを軽減する代わりに心に穴を開けるか。」

どっちにしても辛いのは変わらない。

だけど後者なら、朔羅は私のことを気にせずに、ひとつ肩の荷を下ろすことができる。

そのほうがいいんじゃないか?

自分のために結ばれた婚約である手前、朔羅からその話は言い出しづらいだろう。

だから私が言わないと、朔羅はずっと囚われたまま。

……それか。

「……話さないとな……。」

朔羅の携帯に、一通のメッセージを送った。