ふたつのさくら

それは、さっき感じた視線に酷似していた。

天狗のものよりは弱いけど、確かに「殺意」と呼ばれるものだった。

「妖怪は人を喰らう。それは朔羅も例外じゃない。そして妖怪の大好物は霊力だ。つまりお嬢、お前なんだよ。」

さっきまでの優しさはどこにも見えず、はっきりと、突きつけられる。

「隣の人間が、首に包丁当ててきてるようなもんなんだぞ?それでも好きだって言えるか?自分を殺そうとしてる相手と仲良くできるか?俺は絶対に無理だね。」

「……」

すぐに答えられなかった。

現実味がない。

想像できない。

……朔羅が、そんなことするはずない。

何も言わない私に、菖蒲さんはまた優しい声で言ってきた。

「……朔羅はね、そうやってお嬢に負担をかけるのが嫌なんだよ。強迫観念みたいなものだと思う。自分が原因で、お嬢を悲しませてはならない、自分が、お嬢を守らなければならないっていうね。」

だから私に心配させてくれないんだ。

やっと納得できた。

「だからかな、昨日ね、朔羅泣いたんだよ。」

「……え。」

朔羅が……。

「死なせてって言いながら、まだお嬢といたいって。何も分からなくて、怖いんだってさ。多分どうすればお嬢に心配かけずにいられるかを考えて、無理だって思って、パニックになったんだろうね。全部ぶちまければいいのに……。」

私が、朔羅の負担になってる……。

朔羅が、私のことで苦しんでる……。

「……他にもいろいろあったけど、今日のことはそれが1番の原因だと思う。」