ふたつのさくら

さて、時刻は既に夕飯時。

あまり気にしていなかったけど、僕昼ごはん食べ損ねてるんだよな。

今さらお腹がすいてきた。

「凍夜、夕飯食べ行こうか。」

そう声をかけて立ちあがろうとすると、凍夜に止められた。

「兄さん、だめ。俺が持ってくるから、大人しくしてて。」

「……僕、今日そんなにひどい?」

いつもなら玄関で菖蒲は大人しく帰るし、あんな警告もしない。

凍夜も心配そうな顔をするけど、部屋までついてくるなんて滅多にないし、出歩くのを止めるなんてこと、しないはずだ。

なんかおかしい。

凍夜は少し考えて口を開いた。

「んー、ひどいっていうか……目、まだ戻ってないよ。」

「え?」

凍夜に鏡を渡され、確認する。

確かに僕の目はまだ紅く染まったままだった。

「……ほんとだ。あー、こりゃそうなるわ。はーおけ、分かった。部屋にいるから持ってきてもらっていい?」

僕がそう言うと、凍夜は頷いて、トコトコと部屋を出ていった。

先生や咲良さんには見えないように、菖蒲が術をかけていたのだろう。

そういうのは菖蒲の得意分野だ。

「そろそろ限界来てるのかもなー……。」

布団に寝転がりながら呟いた。

目を閉じ、意識を集中させる。

全てを魂の奥深くにしまうように。

一度深呼吸をして目を開ける。

鏡を見れば、僕の両目はいつもの黒色に戻っていた。

平気でいるつもりでも、体は思ったより疲れているようで、僕は凍夜が戻ってくる前に、意識を失うように眠ってしまった。