ふたつのさくら

「……朔羅はね、異常なほどに妖怪に侵食されてた。人の姿で生まれてきたのが奇跡なくらい、妖怪の血が濃いんだ。」

そんなに……。

私よりも、ってことだよね……。

「お嬢も知ってるだろ?朔羅は小さい頃、あまり外に出なかった。学校にも、小1のときは行けなかったし、行けるようになってからも、頻繁に休んだ。」

ただ体が弱いんだと思ってた。

「お披露目だって、自分のコントロールが出来なかったから朔羅だけ8歳。」

でも全然違った。

「凍夜が正式な跡取りなのも、お前らの婚姻が婿入りなのも、朔羅に力を使わせないため。」

少し考えれば分かったかもしれない。

「……それが書面に残ってないのは、朔羅がいつ死ぬか分からないから。」

「っ!?」

さっきと変わらず、朔羅の頭を撫でながら、悲しそうに、憐れむように言った。

「……全部、朔羅のため。朔羅が少しでも生きやすいように、それぞれの親がやったことだ。」

「それ……朔羅は……?」

菖蒲さんと目が合った。

「……知ってるよ。朔羅も、凍夜も、奏美も、もちろん俺も。みんな知ってる。」

奏美のほうを向く。

奏美は気まずそうに目を逸らして俯いていた。

「……お嬢に言ってないのは、朔羅がそれを望んだから。」

なんで……。

「お嬢には、嫌われたくないんだって。」

「……私、そのくらいじゃ嫌いにならない……。」

たとえ政略だったとしても、それで朔羅を守れるなら構わない。

だって朔羅が好きだから。

「じゃあ、こう言ったらどうだ?」

菖蒲さんの声色が変わる。

菖蒲さんが瞬きをすると、瞳の色が、紅になっていた。

「……朔羅が、お前を殺すんだ。」

「ひっ……」