ふたつのさくら

大人しく奏美について歩くこと約40分。

私が歩くスピードに合わせてか、かなりゆっくりとやって来た。

奏美は玄関で声をかけることもなく扉を開ける。

そして靴を脱いで、奥へと進んだ。

私も同様に、黙ってついて行く。

奏美が向かったのは朔羅の部屋だった。

襖を開けずに、声をかける。

「菖蒲、連れてきた。」

すぐに中から返事があった。

「入っていいよ。」

奏美が襖を開けると、中の様子がよく見えた。

壁際には布団が敷いてあり、その横に菖蒲さんと泣いてる凍夜くん。

布団の中には、朝よりもさらに白い顔で横になる朔羅がいた。

ちゃんと出来ているのかもよく分からないほど早い呼吸で、時折苦しそうに顔を歪めていた。

「……っ」

思わず目を背ける。

「……見ていられないよな。」

菖蒲さんがポツリとつぶやいた。

「全部取り上げたはずだった。自傷、自殺の凶器になるものは全部。なんで睡眠薬なんて隠し持ってんだよ……。寝れないなら素直に言えよ……。」

優しく朔羅の頭を撫でながら、悲しそうに言う。

そんな菖蒲さんの正面に、私と奏美は座った。