ふたつのさくら

……診察はすぐに終わり、帰宅の許可が降りる。

家に帰って時間を確認すれば、まだ10時前だった。

今から学校行ったら、3時間目には間に合うかな……?

利き手が折れてるから不便ではあるけど、左でもノート……取れないな……。

試しに書いてみれば、へにょへにょのよく分からない線になっただけだった。

でも学校には行こうと思った。

絶対余分なことばっかり考えるから。

「お嬢様、今から……何してるんですか?」

部屋に入ってきた奏美が、呆れたように言う。

「何って……学校の支度?」

「はぁ……」

なにもため息つかなくていいじゃない!

って言っても、自己責任なんだけどね。

今、私の部屋は今までにないくらい散らかっていた。

いやぁ……腕一本使えないっていうのは、想像以上に大変で……。

「まぁいいか。お嬢様、今から徒野の家に行きますよ。」

「え……今から?」

行っても誰もいないんじゃ……。

「はい。あなただって、なんで朔羅さまがあんなことをしたのか、理由を知りたいでしょう?」

理由……。

「……分かるの?!」

奏美に詰め寄った。

奏美は表情を変えることなく言った。

「菖蒲なら。早く行きましょう。朔羅さまが起きる前に。」

「え?うん……?」

なんで朔羅が起きる前なのかは分からなかったけど、聞いても答えてくれる雰囲気じゃなかった。