ふたつのさくら

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「ん……」

ゆっくりと目を開ける。

最初に知らない真っ白な天井が目に入って、次に奏美が顔を覗き込んできた。

「お嬢様、起きましたか?」

心配そうに聞いてくる。

頷いた。

それを見て、奏美は安心した顔になった。

「よかった……朔羅さまに殺されないで済む……。」

朔羅……?

朔羅!

「ねぇ!朔羅はだい……!」

起きあがろうとすると、お腹に鈍い痛みが走った。

我慢できなくはないけど、いきなりだと辛い。

そして右腕も、ギプスで固められていることに気づいた。

「お嬢様!急に起きあがらないでください……。」

左手をついて、ゆっくりと起き上がる私を手伝いながら、奏美が言った。

「ごめん……。」

「……朔羅さまは一応生きていらっしゃいます。でも、お嬢様より重症です。まだ目を覚ましていません。」

奏美は続ける。

「……大量の睡眠薬を服用していたようで、菖蒲が吐かせましたが、どれだけ時間が経ってるか分からないから、なんとも……。」

大量の睡眠薬って……もう自殺未遂だ。

やっぱり死ぬ気だった。

「……なんで……。」

分からない。

どうして朔羅はそんなことをしようと思ったの……?

「……俺、ちょっと電話してきます。菖蒲にも当主さまにも伝えないといけないので。」

「うん……。」

暗い気持ちを断ち切るように、奏美は明るく言って部屋を出ていった。

「朔羅……朔羅ぁ……!」

どんな事情かなんて知らないけど、恋人の自殺未遂なんて知りたくなかった。

悲しくて、辛くて、苦しくて、昨日気づけなかった自分のせいなんじゃないかって、自分を責めていた。

ただ朔羅に会いたかった。

こんな格好で行っても心配されるだけかもしれないけど、朔羅の顔を見たかった。

顔を見て、元気だよって、私はここにいるよって、伝えたかった。

でもできない。

菖蒲さんやお母さまが、治るまでは自由に出歩くことを許してくれない。

それに朔羅も起きてないから、見せられない。

悔しくて、辛くて、悲しくて、うずくまって泣いた。

息を吸うたびに、殴られたお腹が痛んだ。