ふたつのさくら

その場では、天狗が怯えたようにうずくまっていた。

「……おい。」

「ひっ、はい!」

力量差に気づくの、遅すぎんだよ。

「テメェ、あの子に何した?」

「……」

天狗は答えなかった。

別にいいけど。

僕は近づいて右腕を持って、無理矢理立たせた。

「……まず腕、折ったよなぁ?!」

そのままねじる。

「あ゙あ゙あ゙っっ!!」

派手な音と、苦痛の叫び声がこだまする。

皮膚が破れて、折れた骨が外に出てきた。

「すいません……すいません……!」

遅えよ。

「それと、腹パン?」

右拳を鳩尾に打ちこむ。

アバラが折れる感触がして、そいつは胃液と血の混合物を吐き出した。

そいつの体から力が抜けて、支えがなくなる。

気絶しやがった。

頬を軽く叩いて、起こす。

「この程度でへばってんじゃねえよ、雑魚が。あとは首絞めだけど、他にやったことない?」

「……」

答えない。

イラつくな……。

「……質問に答えろや!!」

「……あ、ありま、せん……。」

他に目立った外傷はなかった。

多分本当にやってないんだろう。

嘘つく理由もないし、そんなことしたらどうなるかわからないわけじゃないだろうし。

「……もう、覚悟はいいよなぁ?」

返事を待たずに、首を絞める。

最初は暴れたり、呻き声をあげたりしていたが、だんだんとそれらは少なくなっていった。

そして……。

パキッ、と軽い音がして、動きが完全に止まる。

それを確認してから、首元に噛みついた。

肉を抉って、頭と胴体を引きちぎる。

その断面から、薄青色をした物体が浮かび上がってきた。

僕はそれを捉えて口に入れた。

「……不味い。」

それは「魂」というものだ。

妖怪の主食。

妖怪の場合は、必ず首にある。

だから頭を落とせば簡単に見つけることができるのだ。

これが妖怪の食べ方。

でも散々言ってるように、妖怪は人も食べる。

食べ方は……知らないほうがいい。

一連の作業を終えて、僕の理性は帰ってきた。

人としての自分の一部が戻ってきたことで、耐えがたい頭痛と吐き気に襲われる。

「うっ、ああっ!!あ……」

気を失った。