ふたつのさくら

菖蒲の口を押さえながら咲良さんに経緯を説明すること約5分……。

もちろん、先生のことは話していない。

個人情報になるからね。

「なぁんだ、やっぱり仕事帰りだったんだね!」

「分かってたなら悪ノリしないでくださいよ……。」

「朔羅の反応が面白いものだからつい……。」

その「つい」が僕を疲れさせるんですよ……。

その言葉はなんとか飲み込んだ。

ほんとに、咲良さんと菖蒲が揃うと碌なことがない。

ただでさえ疲れてるのに、さらに疲れた。

その後、菖蒲に肩を貸してもらいながら咲良さんを渡貫邸まで送り届け、徒野の家に帰る。

玄関で菖蒲に声をかけた。

「菖蒲、ありがとう。もう大丈夫。」

「バカ言え。部屋まで送るよ。」

ここまで来ればあとはどうとでもなる。

菖蒲も暇じゃないんだからもう帰っていいよ、という意味も込めて言ったが、菖蒲は絶対それも分かってて言ってる。

珍しいこともあるもんだ。

「……分かった。」

大人しく部屋まで付き添ってもらった。

途中から凍夜も付いてきて、3人で僕の部屋に向かった。

「ありがとう。」

僕を布団に寝かせた菖蒲に言う。

菖蒲はそれには反応しないで、別のことを聞いてきた。

「お前、明日学校行けるの?」

寝かせてもらった体を起こして、壁に寄っかかって答えた。

「多少無理してでも行くよ。口止めしないといけないこともあるし。」

僕が抱えているものは、まだ咲良さんには内緒にしておきたい。

「そうか……」

菖蒲はそう呟いて、近くで僕のカバンをいじっていた凍夜に声をかけた。

「凍夜、明日、朔羅があまりにも酷かったら学校休ませろよ。」

「はーい。」

凍夜の返事を聞いて、菖蒲は帰った。

「無茶するなよー。」と言い残して。

今日は力が入らないだけで、言うほどヤバくないんだけどなー。