ふたつのさくら

……あ、薬。

「妖怪の力を抑える薬」という名の、ただの精神安定剤。

は全部菖蒲が持ってるから、隠してある市販の睡眠薬。

夜中、苦しくて、辛くてどうしても寝れないときに飲んでいたやつがあるはず。

壁に手をつきながらノロノロと歩いて、机の奥からダイヤル式の小箱を取り出す。

鍵を開ければ、まだ携帯を持っていなかったときにもらった手紙に隠れるように瓶があるのが見えた。

よかった、見つかってない。

取り出して中身を確認する。

残りは20錠くらい。

これだけあれば、死ねるかな?

仮に1発で死ねなくても、意識を失って、結局死ぬのを待つだけにはなるだろうな。

なかなかいいんじゃない?

僕はそれをポケットに入れて、また壁に手をつきながら部屋から出た。

玄関は台所や凍夜の部屋が近いから、見つかるかもしれない。

そう思って裏口に向かった。

そういえば、靴、持ってきてない。

……ま、いいか。

あってもなくても変わらない。






予想通り、誰にも会わないで外に出ることができた。

裏口に向かった理由はもうひとつ。

ここから出れば、すぐに森に入れるんだ。

尖った石や、葉っぱで足を切らないように注意しながら、倒れないように注意しながら、ゆっくりと歩く。

朝の森は明るくて,眩しくて、少し肌寒くて、僕には似合わない気がした。