ふたつのさくら

妖怪は共食いをする。

理由は大きく分けて2つ。

ひとつは力をつけるため。

相手の魂を喰らうことで、そいつの霊力を取り込むことができるのだ。

力が全ての妖怪の世界では、それはとても大事なことだった。

母の妖怪は、矢に貫かれたのち、首を切り落とされて魂を食べられていた。

そして、もうひとつ。

自分の破壊衝動、殺戮衝動に任せて。

ただ壊したいから壊す。

ただ殺したいから殺す。

数は少ないが、そういう理由で自分勝手な行動をする妖怪もいた。

……話が逸れたが、とにかく母親は食べられた。

人の男は悲しんだ。

悲しんだが、これからこの双子をどうやって育てていこうかという問題について考える方が先だった。

双子を守ってくれる母はもういない。

自分では妖怪に太刀打ちできない。

周囲の妖怪は確かに優しかったが、母を、妻を妖怪に殺されているのだ。

信用しきれなかった。

そこで、男は双子を人の世界に連れて帰った。

この4年で、男は境界の隙間を比較的自由に行き来できるようになっていた。

それに伴い、最初は男1人がやっと通れるくらいの大きさだった穴も、子供2人を連れて簡単に通れるくらい大きくなっていた。

人の世界での生活が初めての双子は、すぐにその生活に馴染んだ。

子供の適応力が高いのはいいことだった。

でも世間はそうじゃない。

周囲の人々は、得体の知れない双子を殺そうとした。

男は2人を生かすために、自分が身代わりとなって死んだ。

こうして、双子は短い期間で両親を失った。

双子は自分たちで妖怪の世界に戻り、そっちで暮らすようになった。

しばらくは安寧な生活ができた。