ふたつのさくら

さて、本日の夕飯は、お粥だ。

たまご粥。

おさじを手に取る。

匂いだけで吐きそうだった。

菖蒲には悪いけど、食べれる気がしない。

でも食べないと、動けなくなる。

少しだけ掬って、口に入れる。

味がしない。

ずっと感じていた違和感の正体が、今やっと分かった。

母さんのご飯も、咲良さんのうどんも、味がしなかったんだ。

だからおいしく思えなかった。

今も同じ。

味がしなくて、おいしいと思えない。

吐き出すことはなかったけど、気持ち的には今すぐに吐き出したかった。

なんとか咀嚼して飲み込む。

……ことができなかった。

一回は喉の奥に入ったが、胃液もろとも押し戻される。

焼けるような痛みと不快な酸味が混ざり合って、吐き気を増長させた。

食べ物の味はわからないのに、その味はよく分かった。

その事実が恐ろしくて、悔しくて、苦しくて。

確実に変わっている自分の体が怖かった。

たったそれだけのことで、今までで1番強く、消えたいと、死んでしまいたいと思ってしまった。