ふたつのさくら

……最近、って言ってもここ2、3日だけど、体調が良くない。

母さんの葬式には、出れなかった。

あまりにも辛すぎて。

視界は真っ白だし、体は動かないし、熱で意識は朦朧とするし、なのに寝れない。

辛くてキツくて、眠って楽になりたいのに、できなかった。

菖蒲が睡眠薬を打ってくれたけど、それでもなんかふわふわするだけで、ちゃんと寝ることはできなかった。

次の日も同じような感じ。

昨日は少しマシにはなってたけど、起き上がることはできなかった。

気合いで休む連絡だけは入れたけど、そのあとはほとんど記憶がない。

なんか寝たり起きたりを繰り返していた気がする。

それで今日、起き上がれるほどまで良くなったから、僕のことを話すために呼び出そうと電話をしたわけ。

結局できなかったけど。

怖いんだ。

今になって、咲良さんに嫌われることが怖い。

それがいいことだって、そうしないと咲良さんを守れないんだって分かってる。

覚悟は決めたはずだった。

嫌われる勇気は、持ってきたはずだった。

でもいざそのときが間近に迫ると、言うことができなかった。

呼び出したら言わないといけない。

それで僕の全てを知った咲良さんの顔を見るのが、とてつもなく怖かった。

「情けな……」

「ほんとにな。」

「っ?!」

いきなり声が聞こえた。

ゆっくりと視線を動かす。

早い動きが全然できなくて……。

勉強机のところに、菖蒲が立っていた。

手に持っていたお盆を机の上に置いて、携帯を持ってくる。

いまだに着信が続いていた。

諦め悪すぎない?

菖蒲はそれを手渡しながら言ってくる。

「次いつ話せるかわからないんだ。出来ることは出来るうちにやっといたほうがいいぞ?」

そうなんだけどね?

「……でも、明日動ける保証はないから……。」

起き上がりながら言う。

携帯を受け取って、電源を切った。

ごめんなさい、今日はもう話せない。

菖蒲は悲しそうな顔をする。

そのまま尋ねてきた。

「……夕飯は食べれる?」