ふたつのさくら

しばらく他愛もないことを話し、そろそろ通話を終えようかというとき、私はさっきの問題集でわからないところがあったのを思い出した。

聞けるうちに聞いておこう。

「あ、そうだ、朔羅。」

『なんですか?』

「数学でわからない問題があったの。教えてもらってもいい?」

言いながら問題集を開いて、その問題を探す。

それはすぐに見つかった。

『分かりました。問題集ですよね?出すのでちょっと待っててください。』

「うん。」

返事をすると、布が擦れる音が聞こえてくる。

まるで今布団から出たような。

続けてゆっくりと歩くような足音が聞こえ、椅子を引く音が鳴った。

朔羅が口を開く。

『はい……どれですか……?』

隠そうとしているようだったが、さっきよりも相当疲れたような声だった。

もしかして朔羅……体調悪い?

「……朔羅、無理してない?」

『……』

朔羅が大きく深呼吸をした。

『ふぅ……全然大丈夫ですよ?元気です。』

そう言った声には、疲れは残っていなかった。

なんだろ……気のせい……には思えなかったんだよな……。

あとから倒れないといいけど。

「……そっか。えっとね135番の(2)なんだけど……」

『あー、これはですね……』

朔羅の解説はわかりやすい。

私のことをよくわかってるから、どこでどういう風に躓いているのか、ちゃんと理解してるみたい。

単純に教え方が上手いってのもあると思うけど。

「……あー、そういうことね!」

『はい。もう大丈夫そうですか?』

「うん!ありがとう、朔羅!」

もうこの問題は大丈夫だ。

ふと時計を見ると、もう1時間近く通話していた。

アプリの無料通話とはいえ、あまり長くしすぎるのもよくない。

……もう遅いかもだけど。