ふたつのさくら

……勉強に集中して、早3時間。

そろそろおやつ休憩でも挟もうかと思ったとき、携帯が鳴った。

誰からかも確認せずに通話に出る。

「はい、もしもし。」

『こんにちは、咲良さん。』

「あ!朔羅だ!」

聞こえてきたのは朔羅の声だった。

久しぶりに聞いた声に嬉しさ半分、どこか疲れたような声に心配半分。

『朔羅だって……相手くらい確認してください。変な人からだったらどうするんですか?』

「えへへ……」

呆れたように言った朔羅に、苦笑いを返した。

ごもっともです。

すぐに表情を戻して、朔羅に問いかける。

「それはそうと、朔羅どうしたの?朔羅から電話してくるなんて珍しいね。」

そう、珍しいのだ。

朔羅は滅多に電話をかけて来ない。

それどころか、朔羅からメッセージが送られてくることもほとんどない。

あったとして、欠席の連絡や、事務的なことだけだ。

本当に最低限しか送ってこない。

まあ、ほぼ毎日会ってたから、必要なかったってのはあるかもしれない。

だとしても少ないけどね?

そんな朔羅が、わざわざ電話をかけてきたってことは、なんかしら理由があるはず。

そう思って聞いてみた。

すると、朔羅は急にしどろもどろになった。

『あ、えと、その……』

これもなかなか珍しい。

朔羅でもそうなることあるんだ。

「朔羅?」

『特に用事はないって言ったら、怒りますか……?』

「……?」

朔羅は恐る恐るといったふうに聞いてきた。

……それって、ただ声が聞きたかったとか、そういうやつ?!

え?待って!普通に嬉しいんだけど!

朔羅、ついにそんなこと言うようになったの!

可愛すぎるんだけど!!

私が答えないのを怒っていると勘違いしたのか、朔羅が慌てたように言葉を続けた。

『ごめんなさい、迷惑でしたね。テストも近いのに……忙しいところ、すいませんでした……。』

「あ、待って違う、朔羅!怒ってないから!」

そのまま電話を切ろうとした朔羅を、急いで止めた。

『……ほんとですか……?』

ほんとに心配したように聞いてくる。

私は明るく答えた。

「本当だよ。ただ用がないのに電話してくれたのが嬉しかっただけ。」

『……嬉しいものなんですか?』

嬉しくないと思うのか?

「嬉しいよ。朔羅だって、なにもなくても私が電話かけたらテンション上がるでしょ?」

『めっちゃ上がります。』

食い気味に答えてきた。

分かりやすい……。

「ね?それと一緒。」

『そうなんですね。それならよかった……。』

本当に安心したように、朔羅は言った。

普段電話しないから、こういうことは私が教えてあげる側なんだな……。