ふたつのさくら

忘れがちだが、私や朔羅は今年高校に入ったばかりの現役高校生である。

もうすぐ5月も終わる。

6月の初めには当然定期テストというものがあるわけで……。

勉強しないといけないわけで……。

……一旦現実逃避!

朔羅はまだ学校には来ていない。

朝、休むというメッセージだけが入っていて、その理由なんかは聞いても答えてくれなかった。

多分、家のことなんだろう。

徒野の家には人が少ない。

今あの家に住んでいるのは、朔羅と凍夜くん、そして朔羅のお父さまの3人だけ。

朔羅のお父さまは体が不自由だし、凍夜くんは何もかもをやってあげないといけないわけじゃないけど、まだ小さい。

それに、心の方がだいぶすり減ってるから。

まともに動けるのは朔羅だけ。

奏美や菖蒲さんが手伝いに行っているとはいえ、忙しくなるのも頷ける。

もしかしたら、このまま学校辞めちゃうかも……。

私としては、一緒に高校生活を楽しみたい気持ちはもちろんある。

だけど、それで朔羅が体調を崩すなら、学校は辞めて、家のことに専念してほしいとも思う。

朔羅が学校辞めたからって、会えなくなるわけじゃないし。

でもなぁ……やっぱり、「学校生活」って今しかできないから、もったいない気はする。

わがままだってわかってるけど、朔羅と通いたいなぁ……。

……よし、現実逃避終わり!

今、私の目の前には数学の問題集がある。

数学なのに、アルファベットがたくさん!

なにこれ?

sinとか、cosとか、意味わからないんですけど。

君らなんで数学にまで出張してきちゃったのかな?

英語は英語のところにいようよ。

……なんて言ってても勉強ができるようになるわけがないので、大人しく問題を解く。

私の親は2人とも成績に頓着しない。

留年しない程度に頑張れって感じだ。

普通に過ごしてたら、留年なんてしない。

だけど私は勉強を頑張る。

だって、朔羅って頭いいんだもん!

大して勉強してるそぶりは見せないし、ときどき学校も休むのに。

私よりずっと頭がいい!

多分、頭の出来が違うんだ。

くそぅ、羨ましい限りだぁ!

……ってのは置いといて。

中学の定期テストは、ずっと朔羅と一緒に勉強をして、それなりの成績を取ってきた。

でも今回は朔羅を頼ることはできない。

自分の力で頑張るしかないのだ。

それでいい点とって、朔羅に褒めてもらうんだ!

よし、モチベ上がった!

頑張ろう!!

……とても単純な女である。