ふたつのさくら

「……菖蒲、せめておんぶでお願いできない?」

人通りの少ない道を通っているとはいえ、ここは狭い町の中。

知り合いに会う可能性もある。

「できない。」

即答された。

やだー、こんなとこ渡貫の誰かに見られたら、僕もうお婿に行けない!

「なんでさ?」

理由、聞いておいてあれだけど、聞かなきゃ良かった。

菖蒲が妖しく微笑んだから。

「……だって、おんぶじゃ朔羅の顔が見えないじゃん。せっかくいい顔してるのに、見ないと損!」

忘れてたー!

菖蒲は僕の顔が好きだったー!

「……菖蒲!今すぐおんぶにしろ!命令だ!当主命令!!」

「えー、いいじゃん。せっかく褒めてるんだからさ、素直に受け取っときなよ。」

「野郎に褒められて素直に喜べるか!気色悪いわ!この変態!!」

体が全然動かないから、その分、口でなんとかするしかない。

そう思ってなんとか言い負かそうとする。

だけど菖蒲は何を言っても知らん顔をしていた。

「あれ?朔羅と菖蒲さんじゃないですか。」

僕が疲れてきた頃、後ろから声をかけられた。

ちょっと、この状況を1番見られたくない人の声だった気がするんだけど……。

そういえばこっちの方、彼女の家で飼ってる犬の散歩コースだったなぁ。