ふたつのさくら

……次に目を開けたときには、僕は布団に寝かされていた。

部屋は真っ暗、外からの明かりも入って来ないことから、夜中だということがわかる。

周囲に人の気配はない。

よかった。

ひとまず、1日、耐えることができた。

起き上がり、体の締め付けがないことに気づく。

そんなことまでやってくれなくていいのに。

少し寝たことで、体はだいぶ楽になっていた。

立ち上がり、静かに家を出る。

近所の公園に向かった。

誰かに会うこともなく、妖怪とも会うことはなく、ベンチに腰掛ける。

今さら悲しくなった。

母さんが死んで、遺体を見ることもできないで、葬儀もまともに参加できなくて。

なんて親不孝な息子なんだろう。

涙は出なかった。

泣くことができなかった。

凍夜みたいに泣けたら、少しは気持ちも楽になったかもしれないのに。

そんな簡単なこともできなかった。

それが辛くて、悲しくて、苦しくなって、また泣きたくなって、でも泣けなくて……。

なんで自分はこうなんだろう。

望んでもいないのに力を持って生まれてきて。

自分が消えるのを感じながらも、家の仕事を続けて。

大事なときに何かをすることもできずに。

最後は……。

……きっと最後には、大好きなあの子を殺してしまうんだろう。

そんなバケモノに、なってしまうんだろう。

そうなる前に、終わらせないといけない。