ふたつのさくら

その後も来客の対応をする。

対応が落ち着いたところで、菖蒲が怒ったように声をかけてきた。

「朔羅、何しにきたんだよ。」

「そんなの、来客対応に決まってるでしょ。僕がいないと、ああやって絡んでくる人がいるからね。」

菖蒲はぐうの音も出ないようで、黙っていた。

「……でも、ちょっと疲れたから部屋戻るよ。もうすぐ渡貫も来るでしょ?」

問いかければ、答えてくれた。

「……あぁ。早く戻れ。またあとで呼び行くから、それまで大人しくしとけよ。」

「分かった。」

玄関を離れて、部屋に戻る。

襖を閉めて、倒れそうになるのをぐっと堪えて、椅子に座った。

時間まで暇だなぁ……。

……咲良さんのうどん、ほとんど食べれなかったな。

天ぷらにいたっては、箸を伸ばすことすら出来なかった。

せっかく作ってくれたのに、申し訳ない。

申し訳なくて、悔しくて、苦しくて、辛い。

決してまずいわけじゃなかった。

でも、おいしくもなかった。

なんか、違和感があったんだ。

確か前もあった。

母さんの料理を食べたときも、一度だけ、同じ違和感を感じた。

その正体はいまだにわからない。

だけど、今日はその違和感が、より強かったように思う。

わからない、なにも……全部わからない。

「……はぁ。だめだな……。」

余計なことばっかり考える。

「……宿題、やらないと。」

絶対今やることじゃないと思いながらも、数学のノートを開いた。

とにかく頭を空っぽにしたかった。

これ以上何かを考えていると、本当に余計なことをやりかねないと思ったから。

あいにく、まだ生きてるもんでね。