ふたつのさくら

「……この度は、ご愁傷様でございます。」

あの人は……茅野さんだね。

北の方にある分家のトップだ。

かなーり嫌な人だった記憶がある。

「……痛み入ります。」

うわ、菖蒲が丁寧な言葉使ってる。

超絶違和感なんだけど。

「……あの、菖蒲さん。当主さまはどちらに?」

当然の疑問だね。

菖蒲はあからさまに不機嫌になった。

もう何度も答えているんだろう。

「朔羅さまはお部屋で休んでおられます。なにか御用でも?」

「い、いえ。ただ、こういった場に当主さまが姿を現さないというのは、少々考えものかと……。」

……てめぇ、ふざけてんの?

こっちだってこんなんじゃなきゃ出てるよ。

菖蒲も似たようなことを思ったようで、怒って言った。

「お言葉ですが、今回亡くなってしまわれたのは、朔羅さまの母親。いくら当主といえど、彼はまだ子供です。心労が募るのも道理かと。」

「しかし、凍夜さまはおられるでしょう?」

菖蒲、このままじゃ手出すかな?

そろそろ行くか。

僕は2人に近づきながら声をかけた。

「茅野さん、本日はお越しいただき、ありがとうございます。」

「朔羅……!?」

「当主さま?!」

2人は僕に気づくと驚いたように目を見張り、礼をとった。

菖蒲までやらなくていいのに。

菖蒲の横に立ち、2人に顔を上げるように促す。

「それで、こんなところで長々と、何の話をしていたんですか?さぞ楽しいお話だったんでしょう?僕も混ぜてください。」

「い、いえ!そんな話など……!それでは、また後ほど……。」

圧強めにいうと、茅野さんは逃げるように奥へと進んで行った。

逃げるなら最初から突っかかるなよ。