ふたつのさくら

「……それだけ元気なら大丈夫か。」

こうは言ったけど、実は全然大丈夫じゃない。

口が悪い朔羅は、口調に気を配るほどの余裕がないってことだ。

それに、さっきは一瞬だったけど気絶してたし、今日のは相当やばい。

本当ならこうしてしゃべることもできないほど、辛いはずだ。

ったく、我慢ばっかり上手くなりやがって。

朔羅が少し笑ったのを見て、俺は話題を変えた。

「そうだ。お嬢がうどんと天ぷら作ってきてくれたんだけど、食べる?」

朔羅の顔が若干嬉しそうになった。

あーはいはい、食べたいのね。

「凍夜は向こうで食べるか。朔羅、持ってくるから、ちょっと待っとけ。」

2人が頷き、凍夜は立ち上がる。

朔羅の荷物を机の上に置いてから部屋を出た。

一度、凍夜と一緒に居間に行って凍夜を座らせ、お盆の上にうどんと天ぷらを乗せたセットを2つ作る。

「食べてていいよ。」

凍夜に声をかけて、部屋を出た。

ひとつは紅葉さまのところに持っていき、残ったもうひとつを朔羅の元に持っていった。

「朔羅、持ってきたよ。」

襖を開けながら声をかける。

朔羅は俺たちが出てったときと同じ場所にいた。

だけど、その場で横になってまた苦しげに息をしていた。

今度は不規則なものじゃなくて、荒い、速い呼吸だ。

机の上にお盆を置いて、朔羅に近づく。

「朔羅……」

かける言葉が見つからない。

体を動かし、布団にちゃんと寝かす。

押し入れから折りたたみ式のローテーブルを取り出し、組み立てて、その上にお盆を移した。

「朔羅、起きれる?」

朔羅は首を横に振った。

無理か……。

「お嬢のうどん、食べれない?」

天ぷらは無理でも、うどんくらいは食べてくれないと。

もう2日くらい、何も食べていないんだから。

言っとくけど、俺が用意しなかったわけじゃないぞ?

こいつと凍夜が寝てて起きなかったか、拒否しただけで。

「……たべる。」

息の切れ間から答えた。

食べたい、けど、起きれない、か……。

朔羅を支えて、無理矢理体を起こさせる。

だけどさっき起き上がったので体力を使い切ったのか、全く力が入っていなかった。

さっきと同じように、壁にもたれさせる。

でもそれすらもできないのか、横に倒れそうになっていた。

困ったな……。