ふたつのさくら

それから約10分後、奏美からメッセージが来た。

本を机の中にしまって、内容を確認する。

『今から向かいます』

それにリアクションだけして、荷物を持って昇降口に向かった。

辺りはすでに暗くなっていて、1人で出歩くのは危険そうだった。

奏美はこんな時間まで来れないこと、分かってたのかな?

昇降口の段差で座っていると、10分もしないうちに、息を切らせた奏美がやってきた。

「お待たせしました。」

「ううん。お疲れ様、奏美。」

「帰りましょうか。」

そうして2人でゆっくりと歩いて、約30分後、渡貫の家に到着した。

部屋で荷物を整理して、すぐに台所に向かう。

迷わず来れた。

3、4人の女性が忙しなく夕飯の支度をしている。

邪魔なときに来ちゃったな。

1人の使用人が、私に気づいて声をかけてきた。

「咲良さま、どうかなさいましたか?」

「いや、えと……あの、あとでここ、貸してもらえませんか?」

そう聞くと、女性は一瞬ポカンとしたあと、笑顔で答えてくれた。

「いいですよ。お手伝いしましょうか?」

うーん……自分で作りたいけど、そんな頻繁にやってるわけじゃないしなぁ……。

「……じゃあ、危ないときだけフォローお願いしてもいいですか?どうしても自分で作りたいので。」

「わかりました。」

返事を聞いて、部屋に戻る。

携帯を取り出して、朔羅にメッセージを送った。

『うどん、明日持って行くね』

このあと作るとなると、どれだけ急いだって8時は過ぎる。

そんな時間に外出なんて危ないし、持ってこられたって迷惑だろう。

だから作るだけ作っといて、明日持って行けばいいと思った。