ふたつのさくら

今度は僕が凍夜の手を引いて、凍夜の部屋に戻ってきた。

玄関に1番近い部屋。

ここなら外の音が聞こえるし、少しは気も紛れるだろう。

部屋の時計を見ると、9時を過ぎたところだった。

学校、行ったほうが気晴らしになるかな?

そう考えて、すぐに取り消した。

凍夜の性格を考えると、今行ったところで、結局誰とも話さずに帰ってくる。

余計にうつ状態になるだけだ。

凍夜を椅子に座らせて、声をかけた。

「凍夜、ちょっと手離せる?」

布団を敷こうと思った。

でも凍夜は少し考えて、首を横に振った。

んー、このままじゃむずいな……。

「どこにも行かないよ?絶対、ここにいるから。だから少しだけ、ね?」

「……でもやだ……」

本格的にメンタル終わってきたな。

少しでも離したら、僕がどこかに行くとでも思っているんだろう。

いつかは行くけど、それは今じゃない。

「……分かった。じゃあ、僕の部屋行こうか。」

凍夜は無言で頷いた。

凍夜の手を引いて、僕の部屋にやってくる。

ここは徒野の屋敷の1番奥。

外の人の話し声なんて、全く聞こえないし、僕が寝るためだけの部屋だから、おもちゃやゲームもない。

気を紛らわせるものが何もないのだ。

でも手を離してくれなきゃ、布団は敷けないから仕方ない。

敷いたままになっていた布団に凍夜を座らせた。

自分も隣に座る。

「……寝たかったら寝てもいいし、他にやりたいことあったらやりな。そばにいてあげるから。」

必要があれば、都度取りに行こう。

凍夜は頷いただけで、何も言わなかった。

手も繋いだまま。

それでいいと思った。

普段、しっかりしてるから大きく見えるけど、まだ8歳にもならない子供なんだから。

存分にわがまま……言う相手は僕じゃないと思うけど、言ってくれ。

まぁ、両親に甘えづらくしたのは僕なんだけどね。

僕がこんなだから、父も母も、僕に近づくことが難しくなったから。

だから僕の調子が悪いときは、凍夜がなんとかしてくれるようになったのだ。

……いつの間にか、凍夜は僕の肩にもたれかかって寝息を立てていた。

「……ごめんね、凍夜。」

僕のせいで不自由な思いさせて。

僕なんか、生まれなきゃよかったな……。