ふたつのさくら

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目を開けると、あたりはすでに明るくなっていた。

昨日、壁に寄りかかるようにして寝てたはずなのに、なぜか布団に寝かされていた。

律儀というか、優しいというか……。

ほっといてくれてもいいんだよ。

隣の布団では凍夜が昨日と変わらない様子で眠っていた。

凍夜の目からこぼれ落ちそうな涙をそっと拭う。

くすぐったかったのか、うなり声をあげて、薄く目を開けた。

「おはよう。」

優しく声をかける。

でも、自分のその声からは、感情が全く感じられなかった。

凍夜が泣きそうな顔になる。

分かってしまったのだ。

夢なんかじゃない、全部、現実のことなんだって。

寝転がったまま、僕に近づいてくる。

人に触れていたいのだろう。

こういうときは、生き物の体温が心地いいんだと、どっかで見た気がする。

凍夜はそのまま抱きついて、また眠ってしまった。

動けない……。

大きく息を吐いた。

「はぁ……全部、夢だったらよかったのに……。」

母さんのことも、僕の中身も……。

僕は寝ることはできず、かといって起きることもできないで、布団の中でぼーっとしていた。