ふたつのさくら

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朔羅が教室を飛び出して、数時間後。

時刻は4時半を過ぎたところ。

正直、今日の授業はほとんど頭に入らなかった。

出て行く直前、朔羅がすごく辛そうな顔をしていたから。

一体何があったんだろう?

靴を履き替えて、学園の坂を降りると、朔羅との待ち合わせ場所に奏美が来ていた。

「あ、奏美。」

奏美は私に気づくと、恭しく頭を下げて言葉を発した。

「お迎えにあがりました。」

軽く頷いて、2人で歩く。

奏美が少し前を歩いて、私が追いかける感じだ。

20分ほどで、渡貫の屋敷に着いた。

荷物を片付けて宿題でもやろうかと思ったとき、部屋に奏美が入ってきた。

「お嬢様、当主様がお呼びです。」

「あ、うん。すぐ行く。」

軽く服装を正して、奏美の後ろを歩き、お母さまの部屋に向かった。

部屋の前で、奏美が中に向かって声をかける。

「当主様、お嬢様をお連れしました。」

返事はすぐにあった。

「入って。」

疲れたような声をしていた。

そのことを不思議に思いながらも部屋に入り、お母さまの前に座る。

奏美は中には入ってこないで、外で待っていた。

いつもは近くにいるお父さまも、お母さまの付き人である浅見さんも、部屋にはいない。

完全に2人きりだ。

なに?何の話をされるの?

黙ってお母さまが話し出すのを待つ。

お母さまは目を逸らして、さっきと同じような疲れた声で話し出した。

「……咲良。今朝、呉羽さんが亡くなりました。」

「……え?」

呉羽さん、って確か、朔羅のお母さまの名前?

その人が亡くなった……って、え?!

何でそんな急に?!

「交通事故だそうです。お葬式の連絡は後日、くださるそうよ。」

事故……。

「……咲良、朔羅くんを支えてあげて。あの子、なんでも抱え込む癖があるから。」

「……っ」

お母さまの言葉を聞いて、私は勢いよく立ち上がり、部屋を飛び出した。

襖を開けた瞬間、奏美がびっくりした顔をしていたが、それを置いて自分の部屋に急いだ。

無事に部屋に着いて、カバンを漁る。

携帯を取り出して、朔羅とのトーク画面を開いた。

文字を打とうとして、手が止まる。

「なんて、送ればいいの……?」

大丈夫……なわけがないし、私はいるよ、ってのも、なんか違う気がする……。

散々悩んだ末、ただ一言『朔羅、元気?』と送った。

やろうと思っていた宿題も手につかず、部屋の中でぼーっとしていた。