ふたつのさくら

……しばらくすると、泣き疲れたのか眠ってしまった。

タイミングを見計らったように、菖蒲が入ってくる。

「……まぁ、そうなるよな……。」

凍夜を見て言った。

多分誰が言っても、凍夜はこうして泣く。

だって、凍夜は母さんが好きだから。

それだけじゃなくて、先代のことも……僕のことも、凍夜は好きだから。

凍夜は僕がもうすぐいなくなることを知っている。

先代も、あの体じゃ平均寿命よりずっと早くに亡くなるだろう。

だからこそのあの言葉。

『みんな一緒じゃなきゃやだ』

そんなこと言うなよ。

……どう頑張ったって、無理なんだから。

切り替えて、菖蒲に声をかける。

「……それで、何しに来たの?」

「あぁ。夕飯……食べる?」

この状況で?

「……いらない。食べたところで、全部吐き出すだけだよ。」

凍夜も同じだろう。

「そう。じゃ鉄剤だけでも飲んどきな。あとで持ってくるから。」

菖蒲は僕の横に座りながら言った。

黙って頷く。

ただ凍夜の頭を撫で続けていた。

そしてまた、菖蒲が口を開く。

「……トラックの運転手、目を覚ましたって、言ってたじゃん?」

警察官はそう言ってたね。

僕は頷いた。

「会う?」

「……え?」

全く躊躇うことなく聞いてきた。

「加害者に会って、直接話を聞けるみたいだけど、どうする?」

直接かぁ……。

僕は無理だなぁ。

普通の人に会うとおかしくなるってのもあるけど、他の理由で。

だから凍夜も会わせられない。