ふたつのさくら

それからさらに5分後、やっと血が止まったらしく、菖蒲は包帯を巻いてくれた。

「ありがとう。」

左手の感覚を確かめながら言う。

んー、微妙。

「あぁ。さすがにそれは跡残ると思うから、リストバンドかなんか、買って帰るか。」

まぁ、結構派手にぶっ刺したからね。

しょうがない。

「先代、とりあえず帰りましょう。」

声をかけて立ち上がる。

貧血でよろけて、机に手をついた。

特に左側に体重をかけてしまったから、手首に痛みが走る。

「いっ……!」

何もできないまま、再び椅子に座った。

「おいおい、無理するなって。」

菖蒲が呆れたように声をかけてくる。

「あはは……」

今度は右手を机につきながら、ゆっくりと立ち上がる。

さっきみたいによろけることはなく、支えなしで立ち上がることができた。

荷物を持ってゆっくりと部屋の外に出る。

1人で歩いてはいるけど、隣の菖蒲は、いつ倒れるかとヒヤヒヤしているようだった。

残念だな、もう倒れないぞ。

受付のある広い場所に出たところで、僕の体は固まった。

「朔羅?」

動けなくなってしまった。

人が、多いから。

レモンのような、みかんのような爽やかな匂いが、あたりに充満していた。

今まで気づかなかったのが不思議なくらい。

あれ?僕、どうやって過ごしてたっけ……?