ふたつのさくら

……とそれはいいとして、母は「事故死」らしい。

それなのに僕はまだ、そのときの状況を教えてもらっていないのだ。

もしかしたら先代には話したのかもしれないけど……まだみたいだな。

先代も、縋るような目で警察官を見ていた。

警察官が、言いづらそうに口を開いた。

「……現場は市内の公民館前。被害者の徒野呉羽さんが歩道を歩いていたところに、大型のトラックが突っ込んだようです。呉羽さんはトラックと建物の壁に挟まれて……ほぼ即死だったと思われます。」

ほぼ即死、ってことはあまり苦しまずに逝けたのかな?

それならよかった……いやよくはないけど。

苦しんで苦しんで、足掻いてもがいてから死んでいったんなら、あまりにも辛すぎるから。

「事故が起きたのは午前10時ごろ。通報時、トラックの運転手は気絶していて、病院に運ばれました。30分ほど前に目を覚まし、今事情聴取をしています。」

携帯の時計を確認する。

今、12時を過ぎたところ。

「凍夜……弟には、まだ言っていないんですよね?」

僕の質問に答えたのは先代だった。

「あぁ。俺が止めた。凍夜は呉羽のことが大好きだから……。」

まるで僕が母さんのことが好きじゃないみたいな言い方だな。

別にいいけど。

わざとじゃないのは分かってるし。

「そうですか……僕から伝えた方がいいですか?」

さっきの言葉で分かるように、先代は口が回る方じゃない。

悪気はないのに、無意識に相手の気に障ることを言って、怒らせてしまうタイプだ。

本人もそれは分かっているはずだ。

母さんに散々言われていたから。

だから、僕はあえて聞いた。

「……そうだな。頼もう。」

「わかりました。」