ふたつのさくら

……これからのことを考えて、怖くなった。

もう、学校には行けない。

気づいたら、気になるだろ。

気にしたら、飲み込まれる、抑えられなくなる。

「……菖蒲。」

ずっと無言で手首を押さえている菖蒲に声をかけた。

「なに?」

ちらりと、こっちに目線だけ向ける。

「……学校、行けないや。」

「はぁ?!」

驚きで手が緩み、まだ塞がっていない傷から血が滲み出る。

菖蒲は慌てて押さえ直し、呆れたように聞いてきた。

「なんで?」

下を向いて答える。

「……母さん、いなくなったから。先代の面倒、見ないとでしょ?」

「それは……そうなるけど……。」

本当の理由は違うけど、これも理由のひとつではある。

今まで母親がやっていたことは、僕がやらないといけなくなるはずだから。

徒野の家の仕事は、ほとんど母親がやっていた。

家事も、地域の集まりも、先代のことも。

僕と凍夜は学校があるし、夜は見回りに出ることもある。

先代はあの体だ。

家事をするどころか、まともに歩けもしないんだから、役には立たない。

それになにより、母自身が、そう望んだのだ。

全部自分がやるって。

だから徒野の家には、使用人的な人が1人もいない。

僕がいる限り、雇うこともできないだろう。

下手に近づかれても困るし。

結局、僕がやるしかないんだ。

「……まぁ、その辺はちゃんと話し合いな。」

え゙……。

「……露骨に嫌そうな顔するなよ。」

無視した。