ふたつのさくら

『ん?朔羅、怪我?』

少し冷静になった菖蒲が聞いてくる。

「そう。刺した……。」

『そうか……』

菖蒲は一瞬悔やしそうにしたあと、すぐに普通になって話した。

『……手当は?』

「タオルで挟んで、膝で押さえてる。」

動けないの辛いし、単純に痛い。

あのときの僕、マジで狂ってるな……。

『おけ。もうすぐ着くから、それまで待ってて。』

「……わざわざ来たの?」

話なら家でするのに……。

菖蒲は少し怒ったように言った。

『怪我してるからね。』

ごもっともです。

『……今、部屋には?』

「1人。鍵閉めてあるから、開けてもらって。」

『警察署で好き勝手やりすぎだろ……。』

呆れたように言う菖蒲に、笑って返した。

いや、ほら。

先代いるし、万が一ってのがあるからさ。

電話を切って、菖蒲が来るのを待つ。

本当にすぐそこまで来ていたようで、切ってから2、3分で、部屋の鍵が開けられた。

入ってきた菖蒲は、さすがに疲れた顔をしていた。

僕がしたのと同じように鍵を閉めて、目の前にやってくる。

「……どう?」

心配そうな顔をして聞いてきた。

「痛い。」

正直に答える。

この痛みのおかげで、僕は僕でいられてるんだから、文句は言えないけど……。

でも痛い。

「そりゃそうだろ。脚どけて。」

言われた通り、手首の上から膝をどかす。

菖蒲はすぐに手を机の上に移して、手で押さえる。

一瞬のはずなのに、一気に血が溢れて、倒れそうになった。

「っ……」

「ちょっと我慢して。椅子座れる?」

近くの椅子に座る。

「……ちょっと低いな……。立膝は……」

無理無理無理!

倒れるって!

全力で首を振った。

「……分かったよ。」

多分手を心臓より高くしたかったんだろうけど、今そんな体力ない!

菖蒲は押さえる力を強めた。