ふたつのさくら

座席表を確認する。

僕の席は廊下側、1番後ろに変わっていた。

交換したクラスメイトには、先生があらかじめ話していたのだろう、元の席には別の生徒が座っていた。

荷物を置いて、そこに向かう。

「……大和。」

「お、さっくん。はよ。」

特に気にしている様子はなさそうだ。

彼は小学校のときの僕を知っている。

まあ、ほとんどの人が知ってるんだけど。

「席、ごめんね。ありがと。」

だからか、僕を蔑むでも突き放すでもなく、明るくこう言ってきた。

「別に気にする必要ないよ。また元気になればいいだけ。」

その言葉がどれだけ嬉しくて、それでいて残酷なことか、誰にもわからない。

僕にも、分からない。

分かったら、分かってしまったら、戻れなくなるから。

曖昧に笑って、席に戻った。

椅子に座り、本を取り出す。

いつまで経っても、この小説を読み終えることができない。

僕のことを放っておいてくれない人がいるから。

その人は僕が席についてすぐにやって来た。

「さーくら。」

その声に、その匂いに、心臓が大きく脈打つ。

最近、苦しいのは胸じゃなくて、心臓なんだと気づいた。

本にしおりを挟んで、顔を上げる。

「おはようございます、咲良さん。」

笑顔の咲良さんが、そこにいた。

「おはよう。」

笑顔、なんだけど。

「ねぇ朔羅。私がなに言いたいか、わかるよね?」

……とんでもなく、怒っていらっしゃる。

なにも言わずに先に来たことと、席が変わってることに対して、大変お怒りのようです。

「……はい。すいませんでした。」

下手に言い訳するより、素直に謝っておいたほうが傷は浅くすむ。

咲良さんはしばらく僕を睨みつけたあと、ため息をついた。

「……はぁ。今度からはしないでよ?」

「……善処します。」

はっきり答えてあげられなくて申し訳ない。

でもこれが、今の僕に答えられる、最善の答えなのだ。

咲良さんははっきりしない僕を心配そうに見ながらも、なにも言わなかった。

すぐにチャイムが鳴る。

咲良さんが席に戻り、同時に岡崎先生が入ってきた。

挨拶をして、出席をとる。

連絡事項を確認したところで、先生が口を開いた。