ふたつのさくら

言われて見てみると、微かに震えていた。

え?いつから?

携帯なってて気づかないなんてある?

慌てて画面を確認する。

「咲良さん……」

……やべぇ。

絶対怒ってる。

これは怒ってる。

とんでもなく怒ってる。

携帯を見つめて青ざめていると、先生が立ち上がり、出口へと歩きながら僕に言った。

「……なんとかしろよ。」

ぽん、と肩に手を置いて。

「……はい。」

通話に出る。

すると、スピーカーにしてるかのような大きな声が聞こえてきた。

『朔羅!今どこにいるの?!』

耳が壊れそうな爆音に、慌てて携帯を耳から離す。

うー、キーンてする……。

「……すいません。学校です。」

耳に当てることなく、マイクに向かって言った。

『へ?学校?』

さっきよりはだいぶ声量が下がった。

これならもう大丈夫かな?

耳に当てて、通話を続ける。

「はい、学校です。すいません。伝えるの、忘れてましたね。」

本当はわざと言わなかったんだけどね。

会ったとき、正気でいられるか分からないから。

咲良さんは僕の言葉に安心したように息をついて、普通の声量で話し出した。

『よかった……時間になっても来ないし、連絡はないし。おまけに電話かけても、ずっと反応ないし……。』

はぁ〜、また、心配かけた……。

ほんとやだ。

いい加減、全部話せよ。

「すいません……。」

カバンから短刀を取り出し、ポケットに忍ばせる。

なにがあっても、咲良さんの前では使わない。

でも、すぐに出せるようにはしておく。

『ううん。とりあえず元気ならよかった。それじゃ、私も今から向かうね。またあとで。』

「はい。」

そうして電話を切る。

短刀とは反対のポケットに携帯を入れて、荷物をまとめて教室に向かった。