ふたつのさくら

でも、事実として菖蒲はなんの資格も取っていない。

だけど菖蒲は独学で、いろんな医療知識を覚えた。

自分のためもあるだろうけど、9割方僕のためだろう。

ありがたいやら、申し訳ないやら……。

「……とりあえず、やり方だけでも覚えておいてください。僕も、そんなことにならないように気をつけるので。」

僕がそう言うと、先生はまた、ため息をついた。

無視して話を続ける。

「……それと、暴れてるときは、無理せず離れてください。他の生徒も絶対に近づかせないでください。」

考えたくはないけど、いつ、どこで、なにが起こるかなんて、僕にも分からない。

結局、気をつけることと、「最悪」を伝えることしかできないのだ。

「無いようにはします。危ないと思ったらすぐに離れます。でも、どれだけ気をつけていても、『絶対』なんてどこにもないので……。」

「……はぁ。」

またため息ついた。

幸せ逃げますよ?

……つかせてるの、僕だけど。

「分かったよ。けど……」

先生は口を閉じた。

気になるなぁ……。

「けど、なんですか?」

先生は俯いて口を開いた。

「……いや、無理するなよって言おうと思ったけど、なんか違うなって思ってな。」

うーん……。

「……そうですね。僕、もう無理しないと学校来れなくなっちゃったので。常に無理はしてます。」

「だよなぁ……。」

「でも、そう思ってくれるだけでも嬉しいです。ありがとうございます。」

笑顔を作って、先生に言った。

先生も同じように笑顔を作った。

「あぁ。それでさ、徒野。」

そう言って机の上、出しっぱなしにしていた僕の携帯を指差した。

「気づいてないのか、あえて無視してるのか知らないけど、ずっと鳴ってるぞ?」

「え?!」