ふたつのさくら

――――――――――――

次の日、僕は先生に伝えた通り、学校に来た。

だけど咲良さんとは一緒じゃない。

伝えてもいない。

なにも言わずに、1人で先に来た。

昨日、抑えられなくなった。

ただ自分から咲良さんを遠ざけるのに必死で、なのに体は動いてくれなくて。

怖かった。

まだ意識はあったから良かったけど、あれで意識まで乗っ取られたらいよいよ終わりだ。

自分が思ってるよりもずっと早く、限界は近づいていた。

教室には行かずに、直接職員室に向かう。

昨日と同じように、岡崎先生は眠そうにパソコンに向かっていた。

「……おはようございます。」

「あぁ来たか。おはよう。調子はどうだ?」

疲れたような声をしていた。

十中八九、僕のせいだろう。

無理なことを頼んだ上に、脅しのように妖怪の重圧を浴びせたから。

一般人にはかなり辛いことだっただろう。

「……昨日よりはマシ、くらいですね。」

目を逸らして答える。

大丈夫、とは言い切れない。

かといって動けないほど悪いわけでもない。

ただ、苦しい。

いや、違うな。

気持ち悪い。

怖い。

恐ろしい。

うまく言葉にできないけど、なんか胸の奥でゆらゆらと動くものがあった。

先生は何かを感じたのか、パソコンを閉じて立ち上がった。

「……場所、変えようか。」

「ありがとうございます……。」

職員室の前に置いておいた荷物を持って、相談室に向かった。

部屋に入って扉を閉める。

先生はカーテンを閉めて、部屋の中央に置いてある椅子に座った。

僕も向かいに腰掛ける。

お互いに無言で向かい合う。

先に口を開いたのは先生だった。

「……徒野はさ、学校、来たいんだよな?」

頷く。

来たい思いはある。

でももう無理かもしれない。

咲良さんに危害を加えるくらいなら、学校なんて来れなくていい。

あ、でもそれじゃ守れない……。

耐えよう。