ふたつのさくら

急に、抱きしめられた。

朔羅だ。

朔羅は弱々しい声で言った。

「……僕が、弱いからです。」

朔羅が弱い?

そんなわけないじゃん。

「弱くて、怖がりで、最低で、最悪で、人間のクズだからです。」

「……なに、言ってるの?」

朔羅は強くて、怖いもの知らずで、かっこよくて、最高で、人間の中の人間って感じの、私の婚約者じゃん!

私は少し笑って、朔羅に声をかけた。

「……朔羅、病んでる?」

そういえばさっき、精神やられてるって言ってたっけ。

「……自分じゃ、そんなつもりないんですけどねぇ。」

朔羅も同じように笑って答えた。

そうなんだ。

「ふふっ、そっか。じゃあ帰ろ?」

朔羅の手を引いて歩きだす。

「おーじゃ、うちも帰るとするかー。」

菖蒲さんもそう言って、別方向に歩き出した。

「菖蒲さん、ありがとうございました。」

菖蒲さんは手を振っていた。

……朔羅と手を繋いで歩き、約20分後、渡貫の家に帰ってきた。