ふたつのさくら

2人で他愛もない話をして、時間を過ごす。

いつの間にか凍夜くんと菖蒲さんの2人はいなくなっていて、時刻は5時を回ろうとしていた。

「あ、朔羅。そろそろ帰らないと、大変じゃない?」

「……そう、ですね。」

これより遅くなると、危ない妖怪が出てくる。

本当はもっと一緒にいたいけど、元気とはいえ、病み上がりの朔羅に無理させるわけにはいかなかった。

荷物をまとめて部屋を出る。

「じゃ、お願いします。」

「……はい。」

玄関を出ようとしたところで、横から菖蒲さんに声をかけられた。

「お、お嬢。もう帰るのか?」

見れば、壁に寄りかかる形で立っている菖蒲さんがいた。

こんなところでなにしてんの?この人。

締め出されたの?

「そうですね。朔羅に負担かけたくないですし。」

「ふーん……」

菖蒲さんは私の隣に立っている朔羅を、厳しい表情でじっと見ていた。

対して朔羅は、菖蒲さんと目を合わせないように下を向いていた。

なにこの気まずい空間……。

どうすることもできずにオロオロしていると、急に腕を掴まれた。

「咲良さん、行きましょう。」

「え?」

朔羅はそのまま私の手を引っ張って歩き出し、それにつられて私も足を出した。

「あ、菖蒲さん、お邪魔しましたー!」

「はーい。」

菖蒲さんはさっきの厳しい表情が嘘のように、明るい笑顔で手を振って答えてくれた。

だけどこっちは……。