ふたつのさくら

しばらく本を読んで待っていると、見慣れた和服姿の女性がやってきた。

浅見さんだ。

奏美ったら、浅見さんに頼んだのね。

度胸あるわー。

っとそれは置いといて。

私は本を閉じて、足元に置いておいたカバンにしまった。

浅見さんが声をかけてくる。

「咲良さま……どうしてこんなところまで来ちゃったんです?」

呆れたような声だった。

みんなさぁ、呆れるのは分かるよ?

自分でもなんでかなぁ?ってなるくらいだからね?

でもさぁ、もうちょっと隠そうとしてくれても良くない?

「いや〜朔羅の家に行こうと思ったら、いつの間にかこんなところに……。」

浅見さんの目が呆れから軽蔑に変わっていく。

「……すいませんでした!」

素直に謝っとくのが吉だ。

「……はぁ。仕方ないですね。」

ため息ひとつで許してくれたらしい。

「……?」

珍しい。

いつもなら小言の3つや4つは言ってくるものなんだけど。

私がその場に突っ立っていると、すでに歩き出していた浅見さんが、振り返って声をかけてきた。

「咲良さま、帰りますよ。」

「あ、うん。」

急いで浅見さんのもとに走る。

「帰る前に、朔羅の家に寄ってってもいい?」

だめだと言われても、行くつもりだけど。

だって心配じゃん!

浅見さんは少し考えて答えた。

「……分かりました。」

浅見さんの後ろを歩くようにして、朔羅の家に向かう。

渡貫の家よりは小さい、けど、世間一般から見たら、かなり大きい、日本家屋が、朔羅の家だ。

しょうがない。

渡貫の家が大きすぎるんだよ。

玄関の前に立って、声を張り上げる。

「すいませーん!渡貫でーす!」

多少、不審には思われるだろうが、これくらい大声を出さないと聞こえないのだ。

インターホンなんてものも、付いていないし。

数秒としないうちに、内側から扉が開かれた。

「はーい、こんにちは、咲良さん。」

出てきたのは凍夜くんだった。

お風呂上がりなのか、髪の毛がしっとりと濡れていた。

「こんにちは。朔羅、元気?」

「兄さんですか?」

そう聞くと、凍夜くんはどんよりと沈んだ顔になった。

え?なにその顔?朔羅、そんなにやばいの?