ふたつのさくら

忘れることなかれ。

私はとんでもない方向音痴なのである!

いやそんな自信満々に言うことじゃないでしょ、と思ったそこのあなた!

……すいませんでした。

学校から家までの道ならさすがにわかる。

でも学校から朔羅の家に行くことなんてないから、迷っちゃった。

あれぇ〜?こっちだとおもったんだけどな〜?

今、私の周りには家がある。

どうやら住宅街のようで、同じ雰囲気の家がずらっと建ち並んでいた。

えー、どうしよう。

仕方ない、奏美に連絡入れるか……。

ポケットからスマホを取り出し、奏美に電話を繋ぐ。

すぐに繋がって、声が聞こえてきた。

『はい、どうされましたか?』

「奏美〜、助けて〜。」

『はい……?』

いきなりヘルプを求められて、困惑しているようだった。

私はかくかくしかじかと状況を説明して、奏美に頼んだ。

「お願い!迎えきて!」

『……』

無言……。

怖いんだけど!

顔が見えないから、余計に怖いんですけど?!

『……はぁ。分かりました。今、ちょっと手が離せないので、別の者に行かせます。それでもよろしいですか?』

呆れたように言ってくる。

ごめんなさい。

「ええ。分かった。」

返事をして電話を切ろうとすると、奏美が話し出した。

『お嬢様、くれぐれも、くれっぐれも!その場を動かないでくださいね。』

「……はい。」

念押しされた。

『いいですか?ちょうちょだー、とか言って追いかけちゃダメですよ?』

私を何歳だと思ってるの?

奏美より年上なんですけど。

「大丈夫だよ。そんなに子供じゃないし。」

頬を膨らませて答えると、奏美はまた、呆れたように言った。

『そうだといいですね。ではお嬢様、お気をつけて。』

電話を切って、携帯をポケットにしまう。

そして家の周りにある塀に寄りかかって、カバンから出した小説を読み始めた。

どう?私を待ってる朔羅のまね。

……。